水引で作られた置物「申」やギフトパッケージとして
人気の「水引」を作ってくださっている喜久優の渡辺さんに
水引の歴史や、水引ができるまで
また、渡辺さん自身のことや今後の展望までいろいろ伺いました。
今回はその最終章です。

【三、家業、企画、未来について】

—喜久優さんの創業はいつですか?

実家は元結の問屋から始まりました。
創業は1888年なので100年ちょっとです。

—渡辺さんは家業を継がれて何年になりますか?

兄が社長として継いで、私は支える裏方として
企画や生産、水引の魅力を広げる活動として約20年になります。
その前は別の仕事をしていました。
もともとなにかを作ることはすきだったので
家業に入る前も何か作ることを探していて
でもどこかで家業も捨てきれない、つながっている部分があって
戻ることになりました。

mizuhiki

—小さい頃は家業をどう感じていたのですか?

その当時は水引を結ぶおばちゃんたちが並んでいるんですけど
何気ない光景として眺めていました。
飯田にある学校では地場産業を習う授業がありまして、
自分も生徒として家業の水引見学をしました
その時にはじめて普段から目にはしていたものは
「水引を作るという仕事があるんだな」と客観的に実感しました。

—地場産業が学べるってすてきですね。

はい。そこから今現在も学校では授業が続いています。
その中で10年以上継続していることがあります
毎年2月にわたしたちも教えに行っていて
ブローチを作るんですけれど、それは小学3年生が作るんです。
どうして2月に作るかというと
3月に卒業する6年生につけてもらうためです。
そうすると卒業式の当日に
3年生は自分たちが作ったものをつけてもらえて嬉しいですし
6年生はもらって嬉しいのもありますが
自分も3年生のときに作ったことを思い出し
「贈る・贈られる」という喜びを体感してもらうんです。

—渡辺さんはいわゆる「水引」という伝統的なものに捕われずに
新しいことにも熱心に挑戦されてますよね?

はい、そうです。鶴、亀や松竹梅など縁起物はもちろん当然なんですけれど
それ以外になにか結びで表現できないかという新しい挑戦はしています。
2004年からジャパンブランド事業というものがありまして、
その活動から2008年には世田谷ものづくり学校での展示やワークショップなど
伝統的なものでなにか新しい価値を生み出すという企画で
色々な方とのコラボや商品づくりもやっています。
その中でH TOKYOとも一緒に作らせてもらっています。
包装でも使っていただいていますし
午年から毎年水引で干支を作っています。

—来年は申ですね。どんなところから発想したのですか?

まずは「ウッキー」感をだそう!と思いました 笑
そのイメージからはじまりました。
木をぶら下がったりする感じなどをだせればと思い
まずは手から発想して行きました。
そこから具体的に顔の感じとかお尻の赤とかも
考えて作って行った感じです。
猿が持っているやんちゃな一面や愛嬌など印象や動きを表現したかったのです。
地獄谷の温泉につかっているおだやかな猿だと
作るのはやっぱり難しいんですよね 笑

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—トータルでは作成にどのくらい時間がかかったのですか?

具体的なかたちに入ったのは1ヶ月くらいです。
最初はそれらしきかたちにはしたのですが
それからちょっとオラウータンみたいな感じになって
一応猿っぽくはなったのでこの線でいけるなと。
そこから形を微調整したりして試行錯誤していきました。
それに約1ヶ月くらいです。
トータル2ヶ月くらいでこの形ができました。
実際に作るのは熟練の職人さんでも1時間に1体です。

—新しいことにもたくさん情報発信などもされていますが
今後挑戦したいことなどありますか?

水引を使った場面をいかにつくって行けるかということになります。
その中で今まで料理や神社のお札にもつなげてきていますし
それ以外にも使っていただけることやシーンがないかなど考えています。
最近ではアクセサリーも作っています。
そう言った面で私たち独自ということもそうですが
お客様のブランドの要望で作る場合もありますし
これからどう作っていけるかというのは考えています。
今までお話したものの他に家を建てる時に上棟式というものがあるのですが
そちらにも水引が使われてます。
そうなると衣食住に関われるので
「水引は何でもできますよ」といつも言って、そういう覚悟で作っています。
実際作ってみていいか悪いかはもちろん判断するのですが
出来ないことは無いと思っているので
水引の表現は挑戦と思ってまずは作ることからやっていきたいです。

—ありがとうございました。
これからも喜久優さんが生み出す新しい水引の世界を楽しみにしています。

12月19日には三宿店にて水引のワークショップを開催予定です。
ぜひご参加ください。(予約制です)
詳しくはこちら

*ワークショップは終了いたしました。

喜久優

明治21年4月(1888 年)
飯田文七元結と水引製造の卸問屋として開業
平成26年11月(2014年) 長野県百年企業<信州の老舗>表彰
主な活動・略歴 http://www.kikuyu.jp/