ハンカチがたびたび出てくる作家がいる。
日常的に自身でも使用していたのだろう。
使い方が粋だなと感じるシーン。

「小鳥に相違ない。切り落としの短い鉛管の中に歩みこんでしまったのであろう。私の胸は騒ぎ立つのである。
急いでジャンパーをぬぎ取り、それを鉛管のあちら側にそっとかぶせて、こちらの端っこをハンケチで蔽う。造作はなかった。そのハンケチの隙間から、彼女の柔い羽毛が、私の手の中にコトコトとすべり込んでくるのである。」 檀一雄『火宅の人』