檀ふみが初めて父である檀一雄の住む能古島を、父のニューヨークの知人と訪れた後、島を出るシーン。
最期の別れを象徴する使われ方。

『緑の丘にポツンと赤い屋根の父の家は、海の上からでもよく見える。
「ほら、あそこ」と、ネピアさんと指を指して確かめあっていたら、家のかたわらで、両親がハンカチを振っているのに気がついた。人影はみるみる小さくなっていったが、白いハンカチはだけは、いつまでもゆらゆらと輝いている。
ネピアさんが、涙に目をしばたたかせていた。私まで、じわりと胸が熱くなってきた。

それから間もなくして、父は福岡の病院に入院し、そのまま帰らぬ人となった。』
檀ふみ 『父の縁側、私の書斎』

檀一雄は著作でもたびたびハンカチが登場するが、自身の生活の中で使用していたのがわかる。
白いハンカチというのが何とも印象深い。