【生地卸の仕事】
—ヤナセさんの会社の成り立ちを教えていただけますか?
社:うちの親父が(株)ヤナセを立ち上げたんです。
戦前にもオーダーのYシャツの生地屋って言うのはあったんです。
シャツ専門の生地屋で青木商店というところです。
そこに勤めていました。
戦争始まってからはその青木商店は軍事工場みたいになってしまったんです。
親父も兵隊に7年行ってました。
戦争が終わると青木商店の社長は
ドレスメーカーの学校をはじめたんです。
なのでうちの親父は帰るところが無くなってしまい
自分でコツコツ生地屋をはじめました。
ブローカーみたいなところからね。
あの当時はものが無い時代ですから
Yシャツのではないかもしれないけど生地を見つけて来て欲しいと
色々オーダーがあったようです。
昭和25年に浅草に行って本格的に商売をはじめて
その3年後に新橋に引越しました。
今のここ(根津)は昭和52年かな。
—はじめは国内の生地から始めたんですか?
社:そうですね。国内で生地を織ってもらっていました。
最初は青梅でした。それから浜松も始めて、
今は国産は浜松が中心です。
—海外の生地をはじめたのはいつくらいですか?
社:本格的にやったのは15年、20年くらいですかね。
日本の生地、機屋さんが衰退してきてしまったということもあります。
昔は繊維も輸出できたんですけどそれが中国製や韓国製が
入って来てしまって機屋さん自体が厳しくなってしまったんです。
なので海外の生地を始めたのは自然な流れだったように思います。
—満さんはいつ入られたのですか?
満:23歳の時に入ったので14年ですね。
—生地屋になるのは当たり前で他の仕事を考えたりはしなかったのですか?
満:考えなかったかもしれませんね。
昔は学校の先生になりたいとか言っていた時もあったみたいですけど。
創業者の孫が5人いる中で僕は男1人で、しかも最年長。
じいちゃんともいつも一緒にいるわけですよ。
そうするとじいちゃんからの影響もありましたし
それを望まれているのであればっていうのもありました。
他に信念を貫いてやりたいっていうこともなかったですし。
もともとのマインドコントロールがあったから
そう思わなかっただけかもしれませんけど 笑
社長は高校から手伝って原付に乗って配達とかもしていたみたいです。
僕らもそうですよ。小学校高学年くらいからは
袋詰めとかやってました。終わらないと飯がでてきませんから 笑
—今後の展望について伺えますか?
社:そうですね。やっぱりわたしの考えとしては
このオーダーをずっとやっていってもらいたいけど、
オーダー全体は縮小していっているんでね。
そこをどう解決して行くか、生き残れるかっていうところを考えています。
シャツ生地屋としてね。
考えてみると、日本の生地からインポートにも
広がったわけだからやり方はあると思っているんです。
ちょっと今こうだって言うものはなかなか言えないんだけど。
40年くらい前にイギリスにちょっといたことがあるんです。
デビットジョンアンダーソンがグラスゴーにあったんです。
アパートの1室でやっていて。
僕はその時からここの生地はピカイチだなって思っていて。
偉い人が出て来てくれて色々話をしてくれたんです。
2人か3人で9カ国ぐらい相手にして商売しているんだと。
9件じゃないよ、9カ国だって 笑
だからね、なにかヒントがあるかもしれないです。
商売ってね規模じゃなくってもやれるかもしれないって。
そういうぴかっと光るものを持っていれば。
—ヤナセさんのシステムってやっぱりすごくって
他のところで出来ないことをやっていますよね?
満:細かすぎるからですよね 笑
50cm、30cmをくれとかね。そいうことも対応していますから。
社:それがいいんです。家族でやれるから。
これがね大勢いたり、大企業だったらこの商売はなりたたない。
そういうことをまじめに対処できるとこじゃないとできない。
オーダーって直しが必ずつきものです。
だからそこらへんにヒントはあると思うんです。
やりかたによってはなにか出来るんじゃないかなって思っています。
—そもそも生地がすきなのでしょうか?
社:まぁ、気にはなりますね 笑
シャツは何着てるのかなとかね。そういうのは当たり前のことですよね。
食べ物屋さんに行ってどんな風につくっているだろうとか
料理人が気になるのと一緒です。
だから好き嫌いというより、なんか気になるんだよね。
満:僕も好き嫌いっていうよりも、商売の媒体として
分析したりとかする感じですね。
ものすごくおしゃれって感じでもないですし。
でも、何が求められているとかそういうことは考えますね。
なぜかっていうとファッションがすきって言うことよりも
客観的に見た方がいいって思うところもあるんです。
うちって問屋なんで。自分の好みで突っ走ってそういう品揃えにする必要は
ないと思うんです。あらゆるものを集めた方がお客さんは
選べるじゃないですか。そいういう意味で無いものをちゃんと入れて行く。
そういうバランスで生地を見ていると思います。
だって僕らの服装みたら分かるでしょ。機能性重視 笑
もちろん生地は好きですけどね。
社:シャツだけはねちゃんといいものきてますけど。
みんな好みが違うんだからしかたないんです。
満:どこに焦点を当てるかなんです。
もちろんこの仕事に誇りは持ってます。
—ありがとうございました。
話に出てきたカルロリーバの生地については店頭で取り扱っています。
http://htokyo.com/?p=7972
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株式会社ヤナセ
上野不忍池近くの、シャツ生地卸業を営む会社。
高級番手を中心に国産はもちろん世界中から上質な生地を取り揃えています。
http://members2.jcom.home.ne.jp/ynas/