一番好きなとっておきのハンカチ、つかいかた、思い出など、
ハンカチにまつわることを、H TOKYO/swimmieに関わる周辺のひとに、
お伺いしていきます。
20人目はswimmieでハンカチを作らせていただいている西山景子さんです。
西山さんは現在、ロンドン在住6年目。
テキスタイル/ファッションデザイナーとして活動をされていらっしゃいます。
日本にご帰国中のお忙しい中、インタビューさせていただき、
普段なかなかお伺いできない興味深いお話をたくさん聞かせていただきました。
毎回インタビューをさせていただくと、
その方のいろいろな面を垣間みることができて
それがとても魅力的でどんどんファンになってしまいます。
作品をつくる人が魅力的だからこそなんですよね。
ハンカチを通してのインタビューですが、
みなさまにも少しでもお伝えできるとうれしいです。
—お持ちいただいたハンカチはどんなハンカチですか?
小学生くらいから使っていたハンカチです。
お弁当を持っていく機会が多かったので、
持ち物の一貫としてかわいいもの持っていきたいという
幼子心に母が応えてくれた物だと思います。
おもにお弁当包みとランチョンマットとして中高生くらいまで使っていました。
—GAPのものなんですね。ふわっとやわらかくて生地感もとてもいいですね。
GAPが日本に上陸したての頃に、子供服がかわいくて
手軽に購入できるということで結構見ていたんです。
母が百貨店に勤めていたこともあり、
子供ながらにいろいろな洋服に触れる機会が多かったんです。
「made in Italy」ってタグが付いてますね。GAPなのに 笑
—そうですね!アメリカかと思いきや…
これは特別なハンカチでしたね。
普段は小さなタオルハンカチを使っていました。
—今はどうですか?
日本に帰ってくると、タオル地が好きなのでそういうものを使っているのですが、
ロンドンにいると、ハンカチ使う機会がなくて持ち歩くことがないです。
気候的にも汗を掻くということはないですし…
—ロンドンの方はあまりハンカチを使われないのですか?
サラリーマン風の男性がハンカチで鼻をかんでいるイメージがありますね。
女性は…スカーフになってしまうかもですが、
バッグに結わえたりですとか、ファッション的な要素が多いですね。
どちらかというと男性の方がハンカチを使っているイメージがあります。
汗を掻くようなスポーツをするときはタオルを使いますし。
日本に戻ってくると、女性がハンカチを使っているのを見ることが多いので
そういうしなやかで上品なところを、日本人として忘れたくないなと思います。
—そうですね。今は日本でもお手洗いにドライヤーやペーパーがあったり、
レストランではナプキンがある場所が多いので、困らないですよね。
たしかにそういう細やかなところが日本人的な美しさを感じますよね。
—ちなみにハンカチは何枚お持ちですか?
数えたことはないのですが、たぶん10枚くらいですかね。
小さいころはもっと持っていました。
小さい頃は毎日持っていた記憶があります。
こういう話をすると暗い子…みたいな感じがするのですが 笑
ひとりっ子だったので、小さい頃は人見知りをすることもあって、
お友達ももちろんいたのですが、
たまにおウチが恋しくなって、寂しくなったりすると
家庭の匂いがするハンカチをかいでおウチを思い出したりしていました。
ハンカチをもっていると安心するというようなうっすらとした記憶があります。
—swimmie銀座店のオープニングの際に西山さんのご両親に
ご来店いただきましたが、おふたりともとてもおしゃれで素敵なご両親でした。
その際、西山さんのハンカチをご購入いただいたのですが、
お使いいただいていらっしゃいますか?
たぶんおめかしをして行ってくれたんですね 笑
ハンカチは使ってくれていると思います。
実家にはハンカチボックスがあって、
私と母はわりとタオル地のものが好きで共用しているのですが、
父は私たちとは別にかごバッグにメンズ用のハンカチを入れて、
その日の気分や洋服に合わせて選んでいるようです。
—やっぱりおしゃれですね!
西山さんは東京出身で都会っ子ですよね。
田舎育ちの私には想像がつかないのですが、どんな環境で育たれたんですか?
両親とも絵が好きで、どこかでかけるというと
美術館に連れていってもらうことが多かったです。
私が生まれる前に亡くなった祖父が画家だったのですが、
幼い頃に私の面倒を見てくれていた祖母や叔母からは
「あなたは画家になれるかもね」と褒められるのがうれしかったのもあって
不思議と絵を描く習慣がつきましたね。
自分は絵描きになると小さい頃はみんなに言っていたんです。
—そうなのですね!
そこからどんな風にファッションにも興味をもたれたのですか?
今でも覚えているんですが、
小学2年生のときに将来の夢を書く機会があって
そのときに友人に「絵描きさんは食べていけないよ」って
言われたんです 笑
それで、んんーと悩んで…
その時にクラスメイトで飛び抜けて周りの子とは違う
とてもおしゃれな子がいたんです。
輸入物の原色系のものとかも着ていて。
それと、小学生向けの雑誌のファッションページに
篠山紀信さんが撮影した写真が掲載されていたのをみて、
そういうことにどんどん影響されていくようになりました。
毎日学校に着ていく服を自分でコーディネートして行くようになって、
そうだ!デザイナーになろうって思ったんです。
今となっては、デザイナーも大変なのですが…笑
—小学生って結構現実的なところがありますよね…笑
でも、今実際に絵を描いてテキスタイルにして、
デザインをされていらっしゃって、
どちらの夢もかなっていらっしゃいますね!
どのようにファッションは学ばれたのですか?
女子美術大学のファッション造形科に進んだのですが、(今はない科だそうです)
そこでは染色、織りなどのテキスタイルから小物の制作までを一通り学び
アート寄りのコンセプト重視の作品をつくったりしていました。
どうしてその服をつくったのかということをとても求められました。
その中で図書館に通いつめてコンセプトから作り上げた経験があって、
そういった意味を込めた服を作りたい、
もっと突き詰めたいという思いが膨らみました。
ロンドンの学校に決めたのは、
コンセプトを突き詰める教え方をする学校が多かったのと、
気づいたら女子美時代に作っていた作品が中世ヨーロッパで、
イギリスの文化に影響されたものが多かったこともありました。
日本は服を作り込む知識はすごく勉強できると思うのですが、
そういった実績を元にもうちょっとクリエイティヴな自分らしいアイディアを
服に落とし込むにはどうしたらいいかというようなことを
一年間学ばせていただきました。
そこで帰ってくる予定だったのですが、
どうしても自分の集大成のコレクションを達成して
ロンドンで働きたいと思いが強くなり、
お願いをして大学院に行かせて貰いました。
テキスタイルは独学で、ブランドにテキスタイルを含めることは
考えていなかったのですが、卒業制作で運良く、
ロンドンのファッションウィークに参加させていただき、
その時にテキスタイルを注目していただけて、今のカタチになりました。
まだまだ突き詰めなければと思っています。
—ブランドのコンセプトである「驚異の部屋」に行き着いたのは
どういう経緯なのですか?
大学院でコンセプトからすべてリサーチして、
ひとつのブランドのコレクションに突き詰める課題だったんですが、
その時にイギリスの風景庭園をテーマとして選び、
そこからいろいろ突き詰めていったときに
いろいろな国から輸入してきたものを集めて
保存する文化があることに気づかされました。
16,17世紀、特に大航海時代と呼ばれる時代に、
ヨーロッパを中心に探検家がいろいろな国の見たこともないものを発見し、
収集してきたものを小さな部屋に保存していたそうです。
その中には植物、絵画、民芸品、剥製、楽器
沢山の見た事もの無い物が収集されていたようです。
その中のひとつに植物もあり、植物や花々をイギリスの土地に植えなおし、
改良して、独自の庭園に仕上げたキューガーデンや
押花や種を標本にして何百冊と貯蔵している自然史博物館が今でも鑑賞できます。
専門家の人しか中に入ることができないところもあるのですが、
それでも自然史博物館の図書館には貴重な200年前の手描きの標本があって
とても刺激になりました。
世界中から集めて来た不可思議な物は実際にはオリジナルではなく、
研究過程を経て作り替えたもので、
自然物だけれども人工物で、美しさの中に奇妙さや、
皮肉めいたものを持っていることに魅力を感じました。
花ならば花、鳥ならば鳥、というイメージを作るのではなくて、
私なりに作り替えたものをテキスタイルで表現しよう思うようになりました。
—西山さんが人工物を作り上げて、驚異の部屋をつくるということなんですね!
具体的にはどのようにして作られているのですか?
まずは図鑑などの資料から、いろいろな部位を切り抜いてコラージュして
不思議な空想の図鑑みたいなものをつくるんです。
なので、ほんとに怖い感じのものがあったりもします。
そしてそのコラージュを自分で描きなおします。
—ハンカチを制作する際に、データで見せていただいたのですが、
本当に緻密で繊細で不思議で美しくて…どんどん引込まれていきました。
拡大をして、じっくり眺めたり…これはある意味、私の特権ですね。
こんなことをいってしまうのは元も子もないことなんですが、
布にプリントすると繊細がゆえにどうしても
表現できない部分がでてきてしまうのが悔しく感じてしまいました。
この凄さをみんなに見てほしいー!という気持ちです。
このような緻密で繊細な画風は昔からなんですか?
標本をみるようになってからですね。
かなりの時間を学生時代は費やしていましたね。
空想でもリアルに描きたいというところがあります。
—その空想の図鑑のものたちには名前が付いているんですか?
それも最終目標のひとつですね。
最初の頃につくった花とキノコには名前がついているのですが、
学名などを調べて適した名前をつけるのもかなり忍耐力のいる大変な作業で…
—名前が付いているものもあるんですね!
西山さんの空想図鑑にとてもとても興味があります。
いつか拝見させていただきたいです。
—ちなみに今日のお召し物は西山さんのデザインですか?
スカートは古着で、上は実は小学生の時に着ていたものなんです 笑
すごくおっきい小学生で今と身長が1cmくらいしか変わらなかったんです。
小学生のときは背が低い人が腰に手をあてるポーズがうらやましかったんですが、
中学生からどんどんみんなに背を越されていくのはショックでしたね 笑
—えーーー!笑
違うかなとは思ったのですが、花柄だったので一応聞いてみたのですが、
まさかのお答えでした。
—H TOKYO/swimmieを知ったきっかけは何ですか?
H TOKYOでハンカチをつくられている赤塚桂子さんに紹介していただきました。
赤塚さんとは私が大学生の時に友人が赤塚さんの事務所で
アルバイトをしていたことがきっかけで知り合いました。
それから時間が経ち、私がロンドンにいることもあり、
なかなかお会いする機会がなく、
SNS上で連絡をとったりしてはいたのですが、
ようやく久々にお会いしたときにH TOKYOのことを聞きました。
—ハンカチのデザインはどのように考えていただいたのですか?
最初はH TOKYOをご紹介いただいていたので、
「Equatorial Camouflage」は男性向けを意識して考えた柄です。
ダークなカラーでトーンをおとしているのと
その時トレンドだったカモフラージュっぽく仕上げました。
「herbarium garland」は花というテーマをいただいたので、
四角形をどう生かすかということを考えて
花畑にいるような雰囲気につくりたいなと思いました。
最終的なイメージはタイトルの通り花冠になりました。
—今後はどんな展開をされていくのですか?
3月にはパリでのコレクションを控えています。
最終的にはライフスタイルも含めたブランドにしていきたいので、
カップとかクッションとかライフスタイルの小物系も挑戦したいと思っています。
小さくてもいいので商品を直接手にとっていただける
衣食住が体感できるようなお店も作れたらいいなと思います。
洋服にしろクッションにしろ集めていくと
ひとつの驚異の部屋の博物館になればいいなと思います。
—西山さんの「驚異の部屋」に興味津々です!
これからも楽しみにしています。
ありがとうございました!
—
西山景子
テキスタイルデザイナー/ファッションデザイナー
東京生まれ
2008年女子美術大学ファッション造形科卒業後、アシスタントデザイナーを経て、
2013年2月ロンドンファッションウイークにてコレクション発表。
同年ロンドンカレッジオブファッション ファッションテクノロジー科修士課程修了。
現在ロンドンと東京を拠点にKEIKO NISHIYAMAとしてブランドを立ち上げ、
キャビネットオブキュリオーシティ(驚異の部屋)をテーマにコレクションを発表、活動中。