TOKYO UCHIWA -越生うちわができるまで-

うちわの専門ブランドTOKYO UCHIWA
その中の一つ、鰻屋や焼き鳥屋さんご用達、越生うちわを作ってくださっている「うちわ工房しまの」さんの工房を見学させていただきました。

越生うちわの生産が江戸時代から行われていた埼玉県越生(おごせ)町は、明治10年頃に生産本数42万本、ピークの明治末期では240万本にも達する、うちわの一大産地でした。

現在は1軒のみ生産を続けている工房で、職人が地元で生育する竹の伐り出しから、最終工程までを行っています。

また、越生うちわは、「一文字団扇」とも呼ばれ、柄と肩骨が横一文字になっていることが特徴です。
横一文字になっていることでうちわ自体の強度が増し、丈夫なうちわになります。

▲水に浸けて竹を柔らかくし、切り出した竹を柄の細さに割っているところ。

薄く削いだ方の先だけに刃を入れて細かく割いていきます。
大体0.5~0.6㎜程の細さにするのですが、これらは測ることもなく目分量だそう。


▲細く割いたところを拡大。とても目分量とは思えない正確さです。

先を割いたら力を入れて手で竹を左右にしごき、根元まで竹を割きます。
水に浸けた柔らかい竹でないと出来ない作業なんだとか。
そして、ここまでの工程を終えたら、乾燥のため2~3年おきます。

2~3年おいた骨を一本一本平らに編んでいきます。


編み終わるとすっかりうちわの形に。

そして、ここから布をうちわに張る作業は奥様が交代して行います。

米を潰して作った米糊を
骨の両面と、貼り付ける生地に塗る作業へと移ります。


生地を裏表に貼り付け、刷毛でしっかりと叩いて押し付けます。
ハンカチ生地の場合は和紙と違い、固く剥がれやすいため
しっかりと叩いて貼り付けているそうです。

貼り付けが完了したら立てかけて乾かし、縁をカットしていきます。

▲実際に使われるうちわの形に合わせた刃。

TOKYO UCHIWAで取り扱っている越生うちわは
ハサミによってカットされていますが、
普通はうちわの形に合わせた金具を使ってカットしています。
カット後は縁に補強のための和紙を貼りつけ完成です。

今回の工房見学では、実際に見ないと分からない、
職人さんの手さばきや工程一つ一つに合った道具の数々などを
間近に見ることができ、大変貴重な体験が出来ました。

越生うちわは、力強い風を起こせるということで
現在でも焼き鳥屋さんや鰻屋さんでも愛用されています。
また、壊れてしまっても何度でも修理が可能なので
一生の付き合いのできるうちわといっても過言ではありません。

まだ梅雨は開けていませんが気分はすっかり夏の気分。ワクワクしますね。
日常使いにはもちろん、これからの時期は浴衣に合わせて持っても◎
夏は是非、うちわを片手にお出かけしてみてくださいね。

TOKYO UCHIWAオンラインショップでもご覧いただけます。

水引ができるまで 喜久優インタビュー(3)

水引で作られた置物「申」やギフトパッケージとして
人気の「水引」を作ってくださっている喜久優の渡辺さんに
水引の歴史や、水引ができるまで
また、渡辺さん自身のことや今後の展望までいろいろ伺いました。
今回はその最終章です。

【三、家業、企画、未来について】

—喜久優さんの創業はいつですか?

実家は元結の問屋から始まりました。
創業は1888年なので100年ちょっとです。

—渡辺さんは家業を継がれて何年になりますか?

兄が社長として継いで、私は支える裏方として
企画や生産、水引の魅力を広げる活動として約20年になります。
その前は別の仕事をしていました。
もともとなにかを作ることはすきだったので
家業に入る前も何か作ることを探していて
でもどこかで家業も捨てきれない、つながっている部分があって
戻ることになりました。

mizuhiki

—小さい頃は家業をどう感じていたのですか?

その当時は水引を結ぶおばちゃんたちが並んでいるんですけど
何気ない光景として眺めていました。
飯田にある学校では地場産業を習う授業がありまして、
自分も生徒として家業の水引見学をしました
その時にはじめて普段から目にはしていたものは
「水引を作るという仕事があるんだな」と客観的に実感しました。

—地場産業が学べるってすてきですね。

はい。そこから今現在も学校では授業が続いています。
その中で10年以上継続していることがあります
毎年2月にわたしたちも教えに行っていて
ブローチを作るんですけれど、それは小学3年生が作るんです。
どうして2月に作るかというと
3月に卒業する6年生につけてもらうためです。
そうすると卒業式の当日に
3年生は自分たちが作ったものをつけてもらえて嬉しいですし
6年生はもらって嬉しいのもありますが
自分も3年生のときに作ったことを思い出し
「贈る・贈られる」という喜びを体感してもらうんです。

—渡辺さんはいわゆる「水引」という伝統的なものに捕われずに
新しいことにも熱心に挑戦されてますよね?

はい、そうです。鶴、亀や松竹梅など縁起物はもちろん当然なんですけれど
それ以外になにか結びで表現できないかという新しい挑戦はしています。
2004年からジャパンブランド事業というものがありまして、
その活動から2008年には世田谷ものづくり学校での展示やワークショップなど
伝統的なものでなにか新しい価値を生み出すという企画で
色々な方とのコラボや商品づくりもやっています。
その中でH TOKYOとも一緒に作らせてもらっています。
包装でも使っていただいていますし
午年から毎年水引で干支を作っています。

—来年は申ですね。どんなところから発想したのですか?

まずは「ウッキー」感をだそう!と思いました 笑
そのイメージからはじまりました。
木をぶら下がったりする感じなどをだせればと思い
まずは手から発想して行きました。
そこから具体的に顔の感じとかお尻の赤とかも
考えて作って行った感じです。
猿が持っているやんちゃな一面や愛嬌など印象や動きを表現したかったのです。
地獄谷の温泉につかっているおだやかな猿だと
作るのはやっぱり難しいんですよね 笑

IMG_4581

—トータルでは作成にどのくらい時間がかかったのですか?

具体的なかたちに入ったのは1ヶ月くらいです。
最初はそれらしきかたちにはしたのですが
それからちょっとオラウータンみたいな感じになって
一応猿っぽくはなったのでこの線でいけるなと。
そこから形を微調整したりして試行錯誤していきました。
それに約1ヶ月くらいです。
トータル2ヶ月くらいでこの形ができました。
実際に作るのは熟練の職人さんでも1時間に1体です。

—新しいことにもたくさん情報発信などもされていますが
今後挑戦したいことなどありますか?

水引を使った場面をいかにつくって行けるかということになります。
その中で今まで料理や神社のお札にもつなげてきていますし
それ以外にも使っていただけることやシーンがないかなど考えています。
最近ではアクセサリーも作っています。
そう言った面で私たち独自ということもそうですが
お客様のブランドの要望で作る場合もありますし
これからどう作っていけるかというのは考えています。
今までお話したものの他に家を建てる時に上棟式というものがあるのですが
そちらにも水引が使われてます。
そうなると衣食住に関われるので
「水引は何でもできますよ」といつも言って、そういう覚悟で作っています。
実際作ってみていいか悪いかはもちろん判断するのですが
出来ないことは無いと思っているので
水引の表現は挑戦と思ってまずは作ることからやっていきたいです。

—ありがとうございました。
これからも喜久優さんが生み出す新しい水引の世界を楽しみにしています。

12月19日には三宿店にて水引のワークショップを開催予定です。
ぜひご参加ください。(予約制です)
詳しくはこちら

*ワークショップは終了いたしました。

喜久優

明治21年4月(1888 年)
飯田文七元結と水引製造の卸問屋として開業
平成26年11月(2014年) 長野県百年企業<信州の老舗>表彰
主な活動・略歴 http://www.kikuyu.jp/

水引ができるまで 喜久優インタビュー(2)

水引で作られた置物「申」やギフトパッケージとして
人気の「水引」を作ってくださっている喜久優の渡辺さんに
水引の歴史や、水引ができるまで
また、渡辺さん自身のことや今後の展望までいろいろ伺いました。
今回はその第2章です。

【二、意味性、産地、結びについて】

—水引とはどういう意味なんですか?

先ほどお話した水引を作る行程にあった『水糊を引く』という意味があると言われています。
水引を作る場所は「はざ場」と言われるのですが
そのはざ場に並んでいる水引(元結)が川や水のように流れているようだ
といういわれもあります。
諸説あるのですがやはりその名前には「水」に関係していると言われています。

motoyui
—飯田の他に水引の産地はありますか?

あります。紙の産地と言われるところは今でも残っています。
ただシェア的には飯田が多いです。
結びの特徴は華やかさ大きさが違ってきます。東京はシンプルになっていますし、
名古屋、関西は比較的豪華になっていると思います。また北陸の方だとより立体感があります。
地域にお披露目をするという文化が残っている習慣で影響しています。
また、時代の変化で変わってきています

—結び方はどうやって入って来たのですか?

吉祥文様がのこる中国結びなどの飾り紐の影響もあるといわれますが、
試行錯誤して鶴や亀などを結びによって表現する日本独自の発展があります。
一度きりのお祝いの結婚式は「結びきり」、何度あってもいいお祝いは「花結び」
などの意味は日本で生まれていったものです。
そこにどう願いをこめるか、何を表現するかというところで変わって行ったのだと思います。

motoyui3

—日本ではご祝儀袋なんかもありますよね?

そうですね。そもそもお金を包んで渡すというのも日本独特の文化だと思います。
僕も昔おばあちゃんの家に行った時に
ティッシュにくるんだお小遣いをもらったことがあります 笑
お金をそのまま渡すよりティッシュでもなにかくるんだほうがいいのではという
ことなんでしょうね。
そういった包むという気遣いが習慣にあるのだと思います。
なのでお金に限らず、何かを贈る時には「包む」や「結ぶ」という行為があって
そこには贈る側からの想いが必ず込められているんです。

—水引って意外といろんなシーンで存在していますよね?

そうですね。圧倒的な量はどうしても年末に向けたものが多いのですが
新年で使うもの、お祝いでつかうものの他に
料理を飾る水引や神社仏閣のお札に使う水引もあります。
特にお祝いのときだけということは無いです。

—ありがとうございました。
第3章【三、家業、企画、未来について】につづきます。

喜久優

明治21年4月(1888 年)
飯田文七元結と水引製造の卸問屋として開業
平成26年11月(2014年) 長野県百年企業<信州の老舗>表彰
主な活動・略歴 http://www.kikuyu.jp/

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